長谷寺といえば湘南の人は大抵鎌倉の長谷寺を思い浮かべると想うけれど、奈良の長谷寺は鎌倉のそれをダイナミックにしたイメージ。

奈良の長谷寺の観音様と同じ素材で作成した観音様を、海に流したところたどり着いたのが鎌倉だったのだそうだ。
お世話になったお宿のガイドさんに、朝勤行にぜひ行ってくるといい!と勧められて、朝の6時過ぎ、眠い目をこすりながらてくてくと向かった。
春先の冷たくも暖かくもない風が心地よく、非日常に時空が歪む。
緩やかな坂の途中に立つお寺の境内に1歩足を踏み入れると、そこはもう別世界のエネルギーに包まれていた。

何段の石の階段を上っただろう。
途中途中箒を掃いているお坊さん達と挨拶をしながら、てっぺんの本堂を目指す。
時折息を切らしながら、たどり着くまでに20分はかかったと思う。
次第にチュンチュンと鳴いている鳥と目線が合ってくる。
だいぶ高いところまで登ってきたなー。

咲き始めた桜は裏切らない美しさだけれど、登りきった見晴台からの景色は、空も緑も建造物もお坊さんたちも、キーンと美しかった。
ここへ来る時に感じた冷たくも温かくもない心地よさは、季節のせいではなかったらしい。
1000年以上昔から守り受け継がれてきた悟りの温度。
行き過ぎないけれど、まったくのゼロではない。ほんのりと帯びる有機的なぬくもりが、極上の安らぎなのだなと自然と笑みがこぼれた。

長谷寺1-1
本堂へ続く長い階段(の、ほんの一部)
高台からの見晴らし