山路を走り、駐車場に止めて車を下りた瞬間から、水飛沫の粒が飛び交っていた。
吸い込む空気がおいしい。
来たくて来たくて来たくてやっと来ることができた那智の滝。
鳥居を潜って砂利道を進むと次第に水音が大きくなり、やがて目の前に大きな大きな那智様が現れた。
那智の滝は滝そのものがご神体で本堂はない。
首が痛くなるほど見上げなくては拝むことが出来ない滝のてっぺんは、まるで雲の隙間から水が流れ落ちているようだった。
あまりの落ちてくる水の勢いと量の多さに言葉を失い、「わー!」と口が開いたまましばらくぼう然と滝を見つめていた。

熊野三山の1つ那智大社は千手観音が祀られているそうだ。
千手観音は千の手と目で、生きとし生ける者すべてを漏らすことなく救う菩薩様だそうで、なんとスケールの大きい仏様だろう。
子年の守り本尊でもあるそうで、亡き父(昭和11年子年生まれ)が那智様にたまらなく魅了されたのもねずみさんの計らいかもしれない。
ちなみに私も子年。

水蒸気をたっぷり含んだ空気の振動に意識を合わせて、静かにあーと声を出してみた。
自分の声と滝音の重なり合いがとても心地良い。
いつまでも声を出していたい。
気づくと自分の存在も水に溶け込んでしまっていて、やっぱり命は水から生まれてきたのだなと実感する。

階段を上ってもっと滝に近づいた。
もう滝は目の前だった。
その時は観音様だとは全く知らなかったけれど、全身をすっぽり抱っこしてもらっているような気持ちになりとっても暖かかった。
とてつもなくでっかい懐だな。
やっぱり本当に大きな存在は性別を超えた存在になるんだな。
私たちの方で勝手に男性の強さを感じたり女性の安らぎを感じたり、その時々必要なエネルギーを与えてくださる。
どれくらい時が経っただろう。
偉大な自然のパワーを思いっきり浴びて、滝を後にする頃には、もう驚くほど気持ちが軽やかになっていた。

たびこふれ
【和歌山県】高さ・水量ともに日本一!那智の滝の魅力とは?
https://tabicoffret.com/article/77428/index.html
滝そのものがご神体
滝つぼに虹